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-6. R18は人が身につける
いちばん大きなアクセサリー

バイクって乗られるんですか?

中型の免許は持ってるんです。
でも、ケガとかしたら仕事ができなくなるなって思ってやめちゃったんです。

あら、残念。

つまらない人生だなと思ったりすることもあるんですが(笑)
R18とか大きいバイクになってくると、そんなに事故もないだろうし、ちょっと後悔してます。

私が接したR18に乗られてるお客様では、お医者さん、脳外科医とか歯医者さんとか、あと、ピアニストとかバイオリニストの方とか、そういう指先がとても大事な職業の方が多いんですよ。
こっちがちょっとびっくりして大丈夫ですか?って言っちゃうんですけど(笑)

若い時にあきらめちゃったんですけど、そのお話を聞くと、じゃあ今からでも遅くないかなって思いますね。

こういう大きいバイクは転んだりすることが少ないので、指や腕をケガするってあんまりないんですよね。

年齢にもよるのかもしれないですね。
若いころは飛ばしたいと思うけど、相応の年齢になると、ゆったり乗りたいとか。
R18くらい大きいと遠出しても疲れないだろうし。

BMWのバイクならではですけど、重心がすごく低いところにあるので転ばないんですね。
カーブでも滑らないですし。
4輪のクルマのような安定性と、バイクの楽しさ、気持ちよさが味わえるんです。
ちょっと乗ってみますか?

うーん…ツヤ感がいいですよね。
これは、なんというか、ずっと持ってたい、長く付き合いたいバイクっていう感じですね。
大事に乗るんでしょうけど、多少の傷とかついたとしても、それも味わいとしてあえて残して10年とか20年とか所有するような。

BMWにもいろんなバイクがあるんですけど、これは長く乗れるように、40万キロ乗れる設定でできてるんです。
ちゃんとメンテナンスすれば一生乗れるバイクですね。

かっこいいんですけど、かっこいいという言葉では表せない何かがありますね…。
所有されてる方の背景が感じられるというか、丁寧に生活してる人、このバイクが好きで、愛してる感じというか、愛されるバイクというか。

R18をデザインしたデザイナーは「このバイクは人が身につけるいちばん大きなアクセサリーだ」って言うんですよね。そのようにデザインしたよって言ってるんです。
もちろん実用的で機能的なものなんですけど。

アクセサリーって人に見せたいものでもあるんですけど、いちばんはそれを身につける自分にとってのものですよね。
クルマだと家族で乗ったりするものだから、家族の事情に合わせて選ばれたりするけど、バイクは自分が乗るもの、自分のものだから、オーダーメイドの鞄を持ちたいっていう気持ちと同じかもしれないです。
バイクも鞄も、いろんな部品でできてますけど、人が触れるところは革ですね。

ものを運ぶのがバッグ。人を運ぶのがバイク。みたいな。

所有する満足が「個人」なんですよね。
オーダーメイドの鞄も、僕のところにわざわざ来て、僕と話をして、何年も待って何かができる。
世の中に一つしかないそれを手にした時の喜びが長く続く、幸せな所有感。満足感。

R18はオーダーメイドではないですけど、そんな素敵な出会いと愛され続けて満足が持続するバイクなんじゃないかと思いますね。ぜひそうあってほしいし。

「満足」を時間軸で考えるとまたおもしろくて、造園業をされてるお客さんがいらっしゃるんですけど、お寺に伺って、話をして何もせずに帰ってくるんですって。
で、話をしながらたまにちょこちょこ手入れをしたりするんですけど、庭を作る仕事って、100年後の人の庭を作ってるんだと。
今、ものを作ってるんだけど、100年単位で作ってる。
自分が死んだ後も100年後の人が見るんだと。
ものを作るって突き詰めるとそういうことなんじゃないかって思うんですよね。
一方、お寿司屋さんでおいしい幸せな一瞬のためにお金を払う、という「満足」もあるわけで。

自分が作ったものが自分が死んだ後も残って、手にした人がそれをまた使うってすごいことですね。

-7. ただそこにあるもやっとしたもの
~自分が欲しいものってなんだろう~

今後のお仕事のテーマってあったりしますか?

ちょっと悩んでるところがあるんですが…。
鞄って使い続ければいずれ壊れちゃうんです。ゴミになっちゃう。
使わなくなったからって捨てられるものは作りたくないなって思うんですけど、実用的なもの、使うものはいずれ朽ちてしまうわけです。
でも、ここにあるこれ。コーヒーカップを入れるものなんですけど(笑)

おもしろいから作ったんですけど、これはまあほとんど使われない(笑)
でも、こういうものが自分が死んだ後もずっと生き残るかもなあって。
そういうものばかり作っていたいなあと思ったりもするんです(笑)
せっかく動物の命の一部をいただいて作ってるので、できるだけ長く使えるようにしたい。
生き続けるようにしたいと思うんですよね。

私ちょっと思いついちゃったんですけど、これ、R18のキーなんですね。
これを素敵な革で包んでかっこよくできないかなって。
バイクに乗ってないときに身につけるものなので包むものが欲しいなって。
R18に乗る人それぞれにお気に入りのキーができるといいなあ、なんて(笑)

うーん…できないことはないですかね。
型を作って…これみたいに革で包んで手縫いでやれば…

これって何ですか?

これは河原の石を革で包んで手縫いで仕上げたものなんですけど(笑)
ペーパーウエイトにするには軽いし、存在してる意味がないんですよね。
ただただ愛おしいもの(笑)
鞄も一応、用途はあるんですけど、これだって作る工程は一緒なんですよね。
いろいろ作ってるとこういうものを作りたくなるんです(笑)
誰かのためでもなく、何のためでもない、でも持っていたくなる、触っていたくなる「もやっ」としたものです。

さっきのコーヒーカップ入れもそうですね。「もやっ」としてる(笑)
でもかわいいですねこれ。ちょっと欲しい(笑)
ものが欲しいって何ですかね?

鞄が欲しいと思ったら普通の鞄屋さんに行って気に入ったものを買えばいいんだけど何か違う。これじゃない。本当に自分は何が欲しいのか、どういうものが欲しいのか。
うちに来てもらうお客さんは、最初はこういうものを作ってほしいといらっしゃるんですが、素材の話をして、作り方の話とかして、じゃあどうしようかと。
次に会って話を進めるまで待っていただくわけです。
その待っている間がお客さんも考える時間なんですよね。

あー。鮎澤さんのところに頼んで、ものができ上るまで時間がかかるの、わかります。
だって、お客さんの方が、説明を聞いて、素材を見て、自分が何が欲しいのか整理するの大変だし時間がかかるんだもの。
鮎澤さんにオーダーしてるんだけど、話しながら、自分が本当に欲しいものは何か?って問われているんですね。

何となくほしいなと思うよくわからなかったものが、話しているうちにだんだんわかるようになってきて、使う人も作る方も、できあがるのが楽しくて、できあがったものに愛着があって 持ってることがうれしくて、ついニヤニヤしちゃうようなもの。ですかね。

さっきのアクセサリーの話もそうですけど、みんな自分の内なるもの、自分らしさだったり、自分に足りないものだったりを鮎澤さんとかに形にしてもらって、それを身につけて、自分を表現してるというか、自己実現してるというか、そういうことなんですかね。

R18がなくても生きていけるけど、R18じゃないとダメだっていう理由がきっとあるんですよね。
その理由は明確ではない、もやっとしたものかもしれない。
生活していく上で必要じゃないんだけど、人生では必要なもの、というかそれじゃないとダメなもの。
「もやっ」としたものが形をまとって目の前に生み出されたもの。

速いバイクに乗ってる人は速く走りたいから乗ってるわけですけど、R18に乗ってる人は「なぜそれに乗ってるんですか?」って問いたくなっちゃうんですよね。
その理由やストーリーを聞きたくなる。
そこにコミュニケーションが生まれて、何となく人とつながって、人と人を結びつけたりする。
まさに、素敵なものはRelationを生む、みたいな感じですね。
なんかまとめちゃった感じですけど、いいお話が聞けて楽しかったです(笑)
次回はMotorrad世田谷にお越しいただいてライブをやるわけですが…

なんか人前でちゃんとしゃべる、みたいなのはあまり得意ではないですが、何か楽しいことができるといいなと思います。 いろんな革見本をお持ちして、見たり触っていただいたりしながら、バイクまわりのアイテムへの展開の可能性をざっくばらんにおしゃべりできたら、と思っています。

楽しみにしています!

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