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-3. 富山の食材をさらに目利きして吟味する

フランス料理のこと、実はよくわからないんですが、
Webサイトで拝見するとジビエをお出しになってる、と…

メインはお魚になります。
富山という土地でやっているのでお魚中心のメニューなんですが、
皆さんやっぱり最後にお肉を召し上がりたいじゃないですか。
なので、そのお肉には地元で獲れたジビエを使ってます。

お生まれも富山でしたね。

そうです。
このあたりでお店をやってる人間はみんなそうですね。

この前お話を伺った鈴木さん(EPISODE 15)がおっしゃられてたんですけど、
料理人にとっていい食材との出会いは本当に興奮するんだと。
やはり富山という土地はそれだけ魅力的なものなんですかね?

僕は東京でも修行してたんですが、最初からいつかここに帰ってきて
自分で店を出そうと思ってたんですね。
僕らの時代はまだ「いつか東京でお店を持ちたい!」とか、そういう人が多かったんですが、
僕は若い頃から、絶対こっちで富山の食材を使った料理をやりたいと思ってたんです。

なるほど。やはり料理は食材なんですかね?

ただ、いい食材を手に入れるには、食材を見分ける目も必要なんですね。
僕は毎朝4時に起きて、魚津の市場にお魚を買いに行ってるんですけど、
自分で競るんですよ。

へー!すごい!

たいていの料理人は、魚屋さんに魚を注文して、それを買うんです。
明日こういうものを作るからこの魚を明日届けてくださいって。普通はそうなんです。
でも、僕はその日に上がった魚を自分で目利きして競りで落として、
そこからメニューを考えて調理する。ちょっと工程が違うんですね。
これを作るから見に行く・買いに行く、でもない。

食材の宝庫・富山のさらに鮮度がいいもの、状態がいいものを選んで仕入れる…

そうです。だからその日、市場に行ってみないと何があるかわからないんですよ。
お野菜も富山のものしか使わないんですけど、直売所みたいなところももちろん行くし。
契約農家さんも一応あるんですけどね。
毎朝そこに行ってみて、その日に仕入れた最高の魚や野菜を
これだったらこうやろうって、メニューは後から考え始める。

-4. 天職を見つけたきっかけ

もともと料理に興味がおありだったんですか?

そうですね。うちは親も祖父祖母も食べるの大好きな家で、
小さい時から僕もいろんなところに食べに連れて行ってもらってた。
親は会社を経営してまして。電子部品とか作ってたんで、何となくそこを継ぐんだろうって
勝手に思って、最初は電気関係の会社に入ってサラリーマンをやってたんですが、
親が「家業なんて継がなくていいよ」って。
「料理の道は素晴らしいからそっちに行ってみなさい」って。

そんなこと言ってくれる親御さんもすごいですね。

特に和食とかイタリアンとかフレンチとか中華とか、どれかに行きたいと思ってたわけでもなく、
母親の親戚が富山でフランス料理の店をやってて、親から行ってみろって言われたんで、
じゃあとりあえず入ってみようかなと。でも、そこで逆に僕がはまっちゃったんですよ。
毎日毎日がほんと新鮮で、やってることに対して感動というか…どんどんのめり込んでいって、
あーこれは天職かも!みたいに思って、それからずっと料理の世界にいます。

そうなんですね…

当時の友達は、どうせ柚木はいい加減だから料理の道なんか続かないだろうと。
すぐ辞めるよってみんなに言われたんですよ。それがどっぷりはまっちゃって。
その時代は労働基準法とか関係ない時代だから、もう朝から晩まで休み無しで
ずっと働くから、みんなびっくりして(笑)

よほど楽しかったんですね?

楽しかったですね。飲み食い大好きなんで。もうどんどんはまっちゃって。

その当時の料理人の修行って、ものすごい厳しいイメージですけど…

ここをオープンする前はホテルの料理長をやってた時期もあって、
その時はやっぱりいろんな若い子たちも使ったりするんですけど
結局ね、好きじゃないとできない仕事ですね。
僕も20代の時に知り合った料理人とかいますけど、今も続いてる人間は一人もいませんし、
自分のお店持てたとしても成功するかどうかはまた別の話ですしね。

ずっとフランス料理一筋ですか?

中華や他の料理を勉強したりはしてますが、僕の軸はフレンチです。
佐藤さんはずっとバイク?

僕はずっとバイクですね。
きっかけは家の近所にあったからっていう安易な理由で(笑)

でもそれもたまたま家の近所だったっていうだけで、
やってみたら天職だったっていうことじゃないですか?
それは安易というよりラッキー!

そうかもしれないですね(笑)
毎日楽しくて、気がついたら10年です。

-5. 柚木さんの考える「伝統と革新」

フレンチはもちろんですが、他の料理も学ばれたとおっしゃってましたね。

フレンチ以外は独学ですが、やっててわかったのは、
どんな料理もやはり最初はちゃんと学ばないとできないんです。
でも、料理って、型にはまっちゃうとそれしかできなくなったりするんです。
有名なところになればなるほど食材の使い方から料理法までガチガチに決まってるから、
そのやり方しかできなくなるんですよ。
その色しか出せなくなっちゃったりすると言うか…

「伝統」にしばられちゃう…

逆に脱サラして始めた寿司屋さんとかいろんな人がいますけど、
そういう人たちの方が逆に自由な発想をいっぱいするし、
おいしければそっちの方がぜんぜんいいかなと思いますね。
だから「伝統」はそれはそれで大切なんですが、
あまり型にはまるのもね、とは思います。

なるべく自由な発想、か…

僕もちょっと意識的にそういう心がけをしたりしてますね。
今はSNSがあっていろんな情報が出てるので、逆に今の若い子たちは羨ましいです。
昔はレシピっていうか、いわゆる作り方とかっていうのはほぼ内緒なんですよ。
本が出てても書いてあることがめちゃくちゃだったり、わざと嘘のことが書いてあったりしてね(笑)
だからいろいろ学べなかった。
でも今は本当にもう正確にぜんぶ教えてくれるから、今の若い子たちは羨ましいんですね。
それをものにできれば、ですけど。

なかなかものにはできないものですか?

それなりに努力というか…逆に他の楽しいこともあふれてるから、
そこが今の時代は難しいんじゃないですかね。

やっぱり苦しい苦しい思いをして初めて自分のものになる?

そういうとこはあると思います。

自由な発想ということで言うと、さっきR18を見ていただいたわけですが、
どんな料理がこのバイクに合うと思われますか?
例えば、あのバイクでこのお店に来たお客さんにはこんな料理を出したいとか…

うーん…それはむずかしいですね…
さっきも言いましたけど、事前にメニューを仕込むタイプじゃないんですよ。
その日に手に入った食材で、そこから組み立てていくから…

なるほど…そうか…

あえてあのバイク、R18と絡めるなら、バイクそのものというよりも、
R18の「伝統と革新」っていうテーマからでしたら、何か作れるかなと思います。
僕はもともとフランス料理、それもクラシックなスタイルのフレンチを
ずっとやってきている人間なんで。

それは逆に新しいかも!

一応、コンクールとかもいろいろ出て全国で2位になったりとかして、
けっこう基礎からビシっとやってきたんですね。
なのでフレンチのエスプリみたいなものは全部やってるんですけど、
ここに来てからはもうまったく変わってきてて…

へー!そうなんですね!

もちろん伝統的なフレンチをがっつりやった経験を活かしつつ、なんですが、
実は今はぜんぜん違うことをしてるんです。
フレンチというよりも、和食もイタリアンも中華もいろんなエッセンスを入れつつ、
富山の食材を使って今の料理に昇華してる、というか。
そこが僕の場合の核心ですね。毎日がぜんぶチャレンジ。

まさに「伝統と革新」!

他では食べられない料理、自分では「ユノキ料理」と言ってますけど、
ここに来ないと食べれない料理をお出ししたいなと。

「ユノキ料理」というジャンル、ですね?

お客様からはフランス料理屋さんとして見られてるんですが、でも今やってることはそうじゃなくて、
料理の世界では「イノベイティブ・レストラン」って言うんですよ。

イノベイティブ!まさに「革新」だ!

でもミシュランのジャンル分けでは僕はまだ「フランス料理」になってて、
そうでもないんだけどなあって(笑)

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