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-3. 澤田健勝の作品世界

すごいおしゃれですね!

僕は基本的には大きいものを作ってるんですが、ここは小物を置いてます。
ほとんど売れちゃってあまりないんですけど…
先日、香港の方がいらして爆買いされまして(笑)

ああ…安田さんもそんなことおっしゃってました(笑)
Relation18 EPISODE9

澤田さんって、いわゆる鍛冶の技法で作られてるんですか?

ここの工房は日本の鍛冶屋ではなくヨーロッパの鍛冶屋なんです。
洋鍛冶と言われるジャンル。
ガウディとかの建築で使われてるように、ひとつの模様をいろいろ組み合わせて作っていくんですね。
鉄は切ったり削ったりするのがとても難しい素材なんです。
だから高温で温めて柔らかい状態のうちに加工するんです。

鍛冶って日本の刀鍛冶しかイメージがないんですけど、
ずいぶん違うんですね。

ですよね。
日本ではなかなか目にすることはないと思います。
海外で洋鍛冶の修行して帰ってきた日本人が数名いるんですけど、
その中の一人が大月で工房をされてて、その方について修業したんです。
で、その技術を身につけて富山で工房を起ち上げた、
というのが経緯ですね。

へー、そうなんですね。
そう聞くと順調にお仕事を続けてこられた印象ですけど…

いえいえ(笑)
技術は身につけたけど、すぐ仕事の依頼がくるわけじゃない。
昼間は鉄工所で働いて、夜中に自分の作品を作ってたんです。
仕事をしながら作品を作って10年間ほどして、30歳の時にようやく独立したんです。
洋鍛冶というのは元々ここの土地にはない文化なので、
作品を作りながら、少しずつ仕事を増やしていって20年。
鉄を知らない県で、高岡でやってるのも鋳造(熱した鉄を型に流し込んで成型する)ですからね。
鍛造(熱した鉄を叩いて加工する)はまったくない。
でも逆に今後が楽しみなんです。

私もオートバイのことなんて何もわかってなくて、
R18のこともまだまだよくわからないことがあるんですが…

こんな自分でさえ20年やってきたので、
ちょっとずつ、積み重ねですね。

-4. R18の「鉄」としての魅力

われわれ素人からすると、職人さんというのは、
他人の技術は認めない、みたいなところがあるのかなと思うんですね。
BMWの中の人たちも、R18に限らず、うちのオートバイはこの世に2つとない
良くできたものだと思って作っている。
で、私たちもすごいものだと思って売っているわけです。
最新の技術や素材を使って、例えばアルミを多用して軽量化して、
それでも昔ながらのデザインにもこだわって。
でも、「鉄」の使い方ってどうなんだろう? 
そのあたりをオートバイにも詳しくて、「鉄の鉄人」である
澤田さんにお伺いしたいなと思っていました。

ニックネームは「チョップ(IRON CHOP=鉄を切る人)」なんですけどね(笑)
まず、R18はデザイン性が圧倒的に違う。
ドイツならではのしっかりした作りで鉄が使われていますね。
シフトとかブレーキとかすごいかっこいいです。
ここまで細部にこだわってるオートバイはなかなかないんじゃないですかね。
でも、こだわればこだわった分、値段は高くなる。
その良さをわかってくれる人に買ってもらえばいいんじゃないかな。

私たちも「ここの鉄がすごいでしょ!」って言いたいんです!
でもBMWは具体的にここがすごいんだ、みたいなことは言わないんですよね…

正面から見てみると、水平対向エンジンがあって、
ライトがあって、そしてロゴの彫刻があって。
うん…このデザインのバランスじゃないですかね。
他にはないですよね。
所有感は半端ないんじゃないですか?

もうどこから見ても愛おしいんですよね(笑)
このボクサーエンジンって、発売された頃はすごく異質なエンジンだったと思うんです。
当時は「革新」的だったけど、100年たったら「伝統」になっちゃった。

やり続けることが大事なんですかね。
こういうプロダクトって、何十人、何百人の天才が作ったものなんで、
今あるものに手を加えようとするな、と自分では思います。
バランスが崩れる。
そこはいじらないほうがいいのかな、って。
でもこのエンジンのおかげで安定するっていうこともあるんですよね。
50歳過ぎて遠出する時に安定感があるのは最高にラクだろうなと思います。

ちょっとふらついた時でも回転数を上げれば安定するんですね。
左右で打ち消し合う力が増幅される。
シャフトがいちばん下にあって、まっすぐの方向に付いているというのも大きいんだと思います。
ちょっとした操作で曲がってくれる。
世間のイメージでは「あんな重いバイクたいへんでしょ?交通事情に合わない?」
なんて思われがちですけど…

勝手に思ってもらえればいいじゃないですか(笑)
そう思ってもらえればラッキーですよね。
うちは鍛冶屋なんで、あんな硬い鉄をすごい温度で熱してハンマーでたたいて、
きれいな作品に仕上げるってすごい難しい仕事してる、と思われるかもしれないですけど、
そう思っていただくのはある意味ラッキーですよね(笑)

鉄の部品のここのつなぎがいまいち、とか、ここがダメだよね、
っていうお話が伺えるかな、と思ってたんですけど、
「最終的にはバランスでしょ」って…
なんかすごくすっきりしました(笑)

オートバイって二輪ですからね(笑)
根本的にバランスが大事なんでしょう。

本質的には鉄がうんぬんって話じゃない、バランスだよって、
深くていいお話いただきました。

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