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-6. 岩瀬に工房を構えたわけ

この工房、枯山水のお庭みたいですごく素敵なんですけど、
雑念を振り払うためにこういう空間にしたんですか?

根が引きこもりなんで、引きこもれる空間を作りたいって
思ってたんですよね(笑)

岩崎さんがこちらに工房を構えられたきっかけは?

実は、僕はガラス工芸作家の安田泰三と同い年なんですね。
井波で独立しようと工房を探してた時に、彼が若手の作家が集まる街があるよって教えてくれて。
桝田さんっていう人もおもしろいよって言うので、じゃあ一度会ってみようかな、て。
井波の新しい工房もほぼ決まってて、うちの父親もそこでやるもんだと思ってた。
木彫の街っていう地の利があるのになんで他に行く必要があるんだ?って、
まったく理解してもらえず…最初は勘当みたいな感じでした。

お父様はお師匠さんでもあるんですよね?
師匠でもあり肉親である人から勘当されるって、
結構きびしいことなんじゃないんですか?…

結婚して子供もいたんですけど、かわいい孫が野垂れ死ぬんじゃないかって(笑)
孫にだけはちゃんと食わしてやってくれ、と。
でも出てったらもうお前に仕事出さないぞって。
5年ほど前に和解して今は仲いいですけどね(笑)

この街でずっとやられてどんな感じですか?

やっと自分がやりたい仕事っていうか、オーダーしてくださる方に、こういう作品にしましょう、
と自分主導で提案できるとこまできたので、すごく楽しいです。
あと20年くらいはがんばれそうかなって。

その先は何かプランがあるんですか?

僕がやってることはアスリートと似てるところがあって、
まあ職人はみんなそうなんですけど、体が資本なんですよね。
でも50歳過ぎて老眼もき始めて、いろいろ思うところはあるんですね。
今までのやり方だと、気力と体力でやってもあと20年くらいかなと。
それから先はどうだろう?
自分はまだ手数で勝負してるところがあるんですけど、
円空(江戸時代前期の修験僧・仏師・歌人)とか
木喰(江戸時代後期の仏教行者・仏像彫刻家・歌人)とかの彫り跡を見たりすると、
少ない手数でも美しく品格があります。
僕はまだぜんぜんわかんないんですけど、そういう境地になれたらいいなって。
70歳になって今と同じようにはできないですからね。

岩瀬ってものづくりの方には理想的なところなんですかね?
ぜんぜん違うジャンルの方が集まってて、相乗効果というか、
互いに切磋琢磨するみたいことってあるんですか?

井波には200人くらい木彫師がいて、みんな仲がいいんですけど、
そういう同業種がたくさんいるところよりも、異業種だけど、感覚的に近くて、
しかも同じような年齢の作家が集まってるのはいいなと思ってます。
同じものを見てもぜんぜん切り口が違うんですよね。
木とガラスと鉄ではぜんぜん違う。

例えば安田さんの作品を見て何かインスピレーションが湧くとかってあるんですか?

作品というより、僕は彼を「いい男だな」と思ってて、そういう風になりたいなと。
彼の前では言わないですけどね(笑)
彼の人柄がいい男だなと思ってて、しかも同い年だから、いろいろ感じるところがあって。
内面が作品に出るとしたら、そういうところを真似るというか、
目ざすと作品にもいい影響が出るのかなと。
作品自体から何か、ということは今はないですかね。

-7. 木彫とオートバイのコラボは成立するのか?

先ほどR18というかオートバイに初めて乗られたわけですが、どうでした?

そうですね…マシン…というか、所有したいなという想いはありましたね。
圧倒的にボリュームがあるとか圧倒的にかっこいいなとか。
見せ所になるようなきれいな仕事がしてあるなと。

オーナーには芸能関係とかアーティストとか、作品を作ってる方が多いんですよね。
でも、メカ好きというわけではなくて、オートバイに乗ってる時間が好きっていう方が多いんですね。
オートバイって、そのままでは自立しないし、予備動作とかいろいろやんなきゃいけない。
ボケっと運転できない。
でも逆に言うと、まったく何も考えていられない時間が持てるんです。
それでいて、湿度とか温度とか匂いとか景色を五感で感じることができる。
考えるんじゃなくて感じるっていう、その時間がすごく好きなんです。

なるほど。

今はご興味なくても、そういう時間が欲しいなって思った時に、
ぜひチャレンジしてほしいなって思います。

大学の時にすごく欲しい時期があったんですけどね。
でも歳を取るとまた乗りたくなるかもしれないですね。

こちらだと美しい自然があって、乗ってるだけでもすごく楽しいんじゃないですかね。
体感が何倍にもなってすごく感動するというか、クルマで通るのとは
ぜんぜん違う感覚が味わえると思いますよ。

やっぱりまずはCHOPに買わせよう(笑)

R18と岩崎さんのコラボレーションで何かできないかなと思って、
作品を拝見したり、お話を伺ってたんですけど、
作品はやはり人物や生物、果物だったり花だったりですよね。
工業製品を彫ったっていうご経験は?

ないですね。

オートバイを彫ってみたいとか思いませんか?(笑)

うーん、ないです(笑)
やはり命があるものというか、命の感じられるものを彫りたいですかね。
僕が美しいと思ったもので、これは彫刻としても見せどころがあるっていうものを
やってみたいって思うんです。

ですよね…。
クルマとかオートバイとか、工業製品って、人間のわがままで進化してるんですよね。
こうなればいいのに、というのがあったら絶対それに応えてくれる。
そういうカタチで進化してきてる。
だから、岩崎さんの、ここに完璧があるからそこに行きつこう、という進化のしかたではなくて、
人のわがままを解釈して叶えていくっていうのがエンジニアなんですね。
その違いに改めて気づくことができたのがすごい貴重な時間だなって。

いろんなものは進化しているけど、人間ってそんなに変わらないんじゃないですかね。
だから、いろいろそんなに進化されても困るっていうか…

メカに頼らず自分の感覚を研ぎ澄ませたいっていうのが、
マニュアルのクルマに乗りたいとか、アウトドアで不便さを味わいたいとか、
こういうオートバイに乗りたいっていうことかもしれないですね。

あー、こういう素敵な空間で、こういう貴重なお話が伺えるのってすごく贅沢です。
いっそ、「モトラッド世田谷でR18を買うと岩瀬に来ていろんなクリエーターの方とお会いできる!」
っていうような特典でもいいかもしれない…
オーナーの方々をお招きして、今日みたいに作品を拝見したり解説していただける、
みたいなのは実現できないですかね!?
人生でそういうチャンスはなかなかないと思うんですが…

そう言っていただけるとうれしいです。
作品に興味を持っていただいたり解説させていただいたりするのは
僕も楽しいんですが…

基本的には引きこもりですもんね(笑)

社会性のある引きこもりを目指してます(笑)

では前向きに検討させていただきます!
今日は貴重なお話、ありがとうございました!

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