さまざまな領域において独自のスタイルで活躍する18人とのコラボレーション。
第5回は、「漆器を身近に、もっと楽しく」をスローガンに、伝統を重んじながらも現代のライフスタイルに合った新しい漆器を提案している山田平安堂 山田健太氏とBMW R18公式アンバサダー・佐藤陽子による対談です。
代官山のショップで色とりどりの漆器を拝見しながら。そして後半は、漆で美しく彩られたHe&Bar(Heiando Bar)で漆の世界に浸りながら、興味深い話が紡がれていきます。
山田平安堂ホームページ https://www.heiando.com/
R18アンバサダーを努めるなど、より多くの人にブランドを体感して頂けるよう、日々活動中。
- -1. めくるめく漆器の世界へ
- -2. 100年後のためのチャレンジ
- -3. めくるめく漆の空間へ
- -4. 真っ赤な会社?
- -5. 100年後に責任を持つために。
- -6. 過小評価されているものに光を当てる
- -7. R18×漆
- -8. あなたは漆派?宝石派?
うわー素敵な器がいっぱい♡
もうぜんぶ欲しい!
古いものから新しいものまでいろいろありますからね(笑)
どうぞ手に取って見てみてください。
ホームページ拝見しただけでも「これ欲しい!」っていうのが
たくさんあったんですけど、お店で実物を見るともうぜんぶ欲しい(笑)
漆器ってハレの日に使うものっていうイメージがあったんですけど、
こうして実際に手に取ってみると、すごく身近なものに感じられますね。
漆器って、蒔絵のように技法を凝らしたアート作品のようなものもありますけど、
毎日ご飯をよそって食べるお椀やお箸みたいな日常で使う器もあるんですよね。
食器って今は陶器のものが多いじゃないですか。
陶器は熱の伝導率が高いから熱いものが入ってると指先で持ちますよね。
でも、漆器は木材がベースなので熱くない。
手のひら全体で抱えることができるんです。
ほっとする感じなんですよね。
とても落ち着きます。
ホームページを拝見すると、すごくたくさんのいろんな話題を紹介されててすごいなと思いました。
漆器って、放っておくとすぐに忘れ去られちゃうものなので、何らかの形で常に情報発信して注目してもらわないといけないんですよね。
伝える力がすごいなって。
私も広報を担当しているんですけど「そんなんじゃ伝わんないぞ!」って、いつもダメ出しをされてるんです(笑)
R18も、わかる人にだけわかってもらえればいい、というところはあるんですけど、それだとマーケットは広がらないし、表現や発信がうまくいかず…。
ブログとか拝見すると、漆器のことを、知らない人にも知ってもらおう、引きこもうという意欲がすごく感じ取れてすごいなあって。
漆器もバイクも、実用の器、実用的なバイクがあると思うんですけど、一方でマニアックな世界というものがあるじゃないですか。
マニアを育てると商売が楽なんだろうなと思うんですけど、これがとてもむずかしい…。
努力はしてるんですけどぜんぜんうまくいかないんですよね。
お店のBGMもJAZZ?すごいモダンですね。
このお店のコンセプトって、30年前に先代が作ったんですよ。
当時は圧倒的に新鮮だったと思うんですよね。
什器とかもイタリア製なんですけど、こういうモダンな空間で漆器を売るっていう発想はそれまでなかったわけです。
うちは、創業から100年を超えて僕の代で4代目なんですけど漆の世界ではぜんぜん新参者で、伝統があるいうわけではないんですよ。
もっと古くからある会社はいくらでもある。
多分、後発だったから、100年前からいつも新しいことにチャレンジしてきたんだと思うんですね。
一部のマニア向けじゃなく、一般の方をマニアにする入口づくりというか。
なるほど。
漆器というのは輪島塗とかその産地のものをその地域で売る、というのが基本だったんですが、ここは京風の漆器を東京で売るっていうことにチャレンジしてるんですね。
で、今は、自社でデザインを起こして自社のものを売るっていうやり方でやっています。
一部のマニア向けだけに商売をするんじゃなくてマニアを作っていくというのがマーケットを作っていくことになるんじゃないかなと。
すごく勉強になります!
僕がやってることは「漆の10年後、100年後に責任を持ちたい」ということなんですね。
いろんな可能性にチャレンジして職人に1円でもおカネを落とそうと。
その試みの一つがそこにあるショパールの時計とか、グラスに漆の手法で絵を付けるっていうトライ。
20~30個やれば1つくらいヒットするかなあと(笑)
そうやって新しいマーケットがちょっとずつ広がっていけばいいなと思っています。
もちろん、従来の漆器もちゃんと伸ばしていかなくちゃいけないんですけどね。
そうやって時代にマッチしたことをやっていくためにはその時代が来た時にはそれを既にやっていないと遅いじゃないですか。
でも、着手してる時点では周りは理解してくれないし注目もされない…。
だから強い信念を貫いていかないといけないと思うんですよね。
BMWの他のオートバイって、機能性、合理性が売りなんですけど、R18って非合理の極みというものなんですね(笑)
でもすごく魅力的なバイク。
将来はきっといいバイクとして評価されると信じてるんですけど、今の時代は機能性、合理性が評価されがちなのでなかなか注目されないんです。
なるほど。
チャレンジに対して理解が得られなかったり逆風が吹いてきた時とか、どうやってモチベーションを持ち続けてこられたんでしょう?
うちは「好きだから続けられてる」というところはあるんですよね(笑)
そこの龍シリーズだって、そこそこ売れるまで10年。
ヒット商品になるまで20年かかってるんですよ。
すごいですね。なんだか励まされました(笑)
うちも廃番にした方がいい商品もいくつもあるんですけど、それを今やめちゃっていいのかとかすごく悩みます。
教科書通りやったことなんか一度もないし、良いのか悪いのか今はぜんぜんわかんないし。
僕がやってることが正しいかどうか評価されるのは30年後とかだと思うんですよね。
やっていることが正しいかどうか自信はないんですけど、僕は信じてる。
僕がやり残したことも次の代につないで、100年後にもちゃんと残るものを作ろう。残してやろう。
ただそれだけですね。
「社長、それはまずいんじゃないですか?」みたいな意見は周りから出ないんですか?
あそこのテントウムシのやつも最初は反対されたって…。
もう最近は反対もされなくなりました(笑)
と言っても僕もそんなに突拍子もないことをするわけじゃないので(笑)
でも可能性はまだまだたくさんあると思ってます。
諦めちゃいけないなあって。
諦めちゃいけないですよね…。
※特別な許可をいただいて撮影しています
代官山のお店から、山田平安堂のもうひとつの拠点、六本木のHe&Bar(Heiando Bar)に移動してさらに深い話へと入っていきます。
大人の空間…素適ですね…。
このBARもそうですけど、食器じゃないところにも進まれてますよね。
普通に考えると、食器を売ろうと思ったらレストランとかにいくと思うんですけど、なぜBARなんだろ?って。
うちの食器で料理を楽しむ飲食店、というのは、もう一つの夢なんです。
でも食器だけなら、うちの食器を使ってくれている飲食店はありますし、ある程度、写真でも伝えられる。
だから先にやってみたかったのはBARの方だったんです。
僕は漆を使った調度品がたくさんある家で育ったので、大きい漆のカッコよさ、すごさっていうのを知ってたんですね。
でも、普通の方はそんなものに触れたことがないわけです。
言葉では一切伝わんないし。
この空間のカウンターとか、そこのテーブル席の壁とか、大きいものの漆の良さを伝えたくて、空間の中の内装に漆を使いたかったんですよ。
BARってお酒を飲む場所だけど空間を楽しむ場所ですもんね。
このカウンターのテーブルとかすごい素敵だなあ。
角がこう丸っとしてて。
これはそういう建築素材があるんですね。
それに漆器の技法を用いてうちの工房で塗ったんです。
まあある意味、革新的なものに伝統の技術を生かしている。
そこのテーブル席の奥の壁も、平面の壁じゃなくて陰影で生まれる漆の光沢が楽しめるようなものになっています。
カウンターは漆器の平面の美しさを。
テーブル席は曲面の美しさを楽しむ。ですかね。
漆のカウンターやソーサーってすごく静かですよね。
ものが触れた時に音はするんだけどそれが柔らかくてとても心地いい。
先ほどお店でもお椀を手で持った感触がすごく心地よかったです。
でも今のライフスタイルだと漆器を日常で使ってる方って少ないと思うんですよね。せいぜい汁椀とお箸。
漆の世界をもっと楽しんでいただければと思って、こんなこともやっているわけです。
さっきR18に乗られた印象はどうでした?
何か訴えかけるものはありました?
やっぱりあのエンジンをかけた時の音、振動は強烈でしたね…。
何か体の奥で眠っていたものが目覚めさせられるというか…。
そういう見た目や頭で理解したものではない体で感じられる印象って、すごく残りますよね。