• SHARE
  • Share to X(Twitter)
  • Share to Facebook

「伝統と革新」を標榜し今の時代に異彩を放つBMW R18と、
さまざまな領域において独自のスタイルで活躍する18人とのコラボレーション。
「IWASE/TOYAMAシリーズ」の今回は、ミシュランガイドで2ツ星を獲得した
名店・御料理ふじ居の藤井寛徳さん登場。
美しい日本庭園を拝見しながら、たいへん興味深いお話をいただきました。
藤井 寛徳御料理 ふじ居 店主
1976年、富山県生まれ。金沢の銭屋、京都祇園の味舌で修業の後、2011年富山で御料理ふじ居をオープン。2019年8月岩瀬に移転。古民家を改築した美しい空間で味わう誠実で丁寧な日本料理は国内外にファン多数。ミシュランガイド北陸2021特別版2ツ星獲得。
御料理 ふじ居 https://www.oryouri-fujii.jp/
佐藤 剛史BMW R 18公式アンバサダー
モトラッドさいたまシティ勤務 BMW認定アクセサリーアドバイザー
家の近所だったから、という理由で入社したものの、すっかりBMWの世界の虜となり、Motorradの世界観をたくさんの⼈々に伝えるべく、様々な活動を展開中。
「オートバイをご購入頂いたお客様には最高に人生を楽しんでいただきたい!」との想いで、オートバイ、車、ロードバイクはもちろん、筋トレ、映画、釣り、キャンプ、歴史探訪、カメラなど、自ら率先して楽しむ1992年9月25日生まれのてんびん座。モットーは「人生を無駄に美しく。」
MOTORRAD SAITAMA-CITY https://www.bmw-motorrad.jp/motorrad-saitama-city/ja/home.html
  • -1. こだわりが伝統をつないでいく
  • -2. 料理人になったきっかけ
  • -3. 日本料理は日本人になじみのない料理?
  • -4. 無駄なものこそ美しい!
  • -5. 藤井寛徳が考える「伝統と革新」
  • -6. 職人とクリエイターの間
    ~「作品」としての料理~
  • -7. 御料理 ふじ居 誕生秘話
  • -8. 料理とお酒 ふじ居のペアリング
  • -9. R18と日本料理のペアリング!?
-1. こだわりが伝統をつないでいく

こちらに座っていきなり目に入ってきたんですけど、
大相撲で優勝した時みたいな器がありますね(笑)

釈永岳さん(岩瀬在住の陶芸家・岩瀬シリーズ第3弾登場予定)の器で、
あのサイズ感のものはうちにしかないと思うんですけど、
とても目を引く作品なので飾らせていただいてます。
もちろんお料理を盛ってお出しすることもありますが、
桝田社長(満寿泉醸造元 桝田酒造店社長・桝田隆一郎氏 EPISODE14)は
あれにシャンパンを入れてみんなで回し飲みされてました(笑)

さすがです(笑)
陶器のものもありますけど木の器も多いですね?

やっぱり木ならではのぬくもりが感じられますし、
こういうのは作る時に大工さんが携わってたりするので、
より職人色が強く感じられるんですよね。
私がこうした工芸品にこだわることで、その道のスペシャリストたちも
こだわりをもって仕事に取り組めるようになればいいな、と思うんです。

やっぱそうですよね。
なるほど。

伊勢神宮の式年遷宮がまさにそうだと思うんですけど、
20年に一度、新しい社を造るわけですね。
20年あればそこに向けてスペシャリストが育つ、と聞いているんですが、
そういうことで、技術を絶やさずに伝統が継承されていく。
こういう輪島塗もそうですね。
名品と呼ばれるものが大切に受け継がれたり、
名人の技が代々語り継がれるのはもちろん素晴らしいことなんですけど、
実際に作る人がこの先どうなっていくのか、というのが、私は気になっています。

輪島塗ってやはり高価なので気軽に買ったりできないんですけど、
我々はこういう仕事なので、お椀にはお金がかかるということもわかっていますし、
我々こそがそういったものにお金をかけないと、と。
ただ、骨董品を買い求めたりもするんですが、
最近はお椀などを自分で発注するようにしているんですね。

オリジナルでこういうのを作ってくれ、と?

そうです。
昔の素晴らしいものは、それはそれでいいんですけど、
輪島塗の絵を描く職人さんたちだって実際に手を動かして作る機会がないと、
腕も上がっていかないんじゃないか。

たしかにそうですね。

だから、例えば富山の立山連峰を描いてくれとか、
雷鳥(日本アルプスで繁殖する鳥。国の特別天然記念物で絶滅危惧種)を
描いてくれっていう風に発注するようにしているんですね。
絵を描いてもらって、もっとこうしてほしいというやりとりをして、
そこから実際の制作に入っていく。
そこに輪島塗の伝統の梨地(梨のようなざらざらした質感を表現したもの)ですとか、
螺鈿(貝殻を削って埋め込む装飾技法)で雷鳥の目を作ったりとか
輪島塗のすごい技法がぜんぶ入れられるように発注するんですね。
そうすると、若い職人さんたちもその仕事に携わることで、
技術が継承されるチャンスも増えるんじゃないかと。
ここ数年はそんなことを考えるようになりました。

やっぱり名人の器も欲しいですけど、私も48歳になって、
この後、晩年を迎えてやがては人生を終えていく中で、
この次の若い世代たちが買い求めたい時に、いい器が残っているようにするのが
今の我々の仕事なんじゃないかなっていうことを、
最近よく考えるようになりました。

先を見据えて…

はい。 自分はおかげさまでいい時代に携わらせていただいたので、
ものすごく楽しくやってるんですけど、
何か自分の時代だけで終わっていいのかっていう…
私のところは娘が二人なので、今このお店がどうなるかはまったく未定なんですけど、
継いで欲しいとも思ってないんですよね。
たまたま料理屋に生まれただけで、何かしたいこともあるかもしれないので、
そこは強制するつもりはないんですけど、その代わりに、
志を持って入ってきてくれた人間には何か良い道を残してあげたいなという
思いの一つが、そういう取り組みだったりというのはあります。

なるほど…
お話を伺っていて、この方、人生何回目なのかな?って
思ってしまいました…

いや、いや(笑)

-2. 料理人になったきっかけ

私事なんですけれども、昨年75歳の父を見送ったんですね。
今の時代だと早いって言われるんですけど、
大病とか怪我もなく人生を全うしてきっと悔いはないだろうなと思ってます。
本当に好きなことをやってきたんだろうなって。
で、自分に置き換えてみると、75歳ってすぐだなって。
人生1回しかないなら、これからの残りの人生どうしようかと
ちょっと深く考えるようになったんですね。

お父様は何をされてたんですか?

魚屋をしていました。
もう朝から晩まで働いて、正月も仕出し料理とかやってて。
私の子どもの頃はディズニーランドも行ったことないですし、
夏休みも絵日記に書くような思い出がないんですよね(笑)
遊んでもらった記憶がまったくないものですから、
自分は絶対に週休2日のサラリーマンになって家族と一緒に過ごして、
っていうことを思っていたんです。
でも、やっぱり父の背中を見ていたせいか
高校3年生で進路を決める時には、
辻調理師学校のパンフレットを見てました。

魚屋さんのお父さんの方を見て、やはり和食に?

そうなんです。
子どもの頃は魚屋なんてかっこ悪いな、って思ってたんです。
今は素晴らしい仕事だと思いますし、それこそ魚屋さんがいなかったら
我々の仕事は成り立たないので尊敬してますけど。
ただ、その時はいつも長靴を履いててかっこ悪いな、みたいな。
でも高校生ぐらいの時、料理人の「鉄人」たちが対決する
テレビ番組が流行っていたんですよね(笑)
で、日本料理の鉄人の方を見て、なんてかっこいいんだろう!って。
もうやるなら日本料理!って決めて、そのまま日本料理の道に入っていった感じです。

-3. 「日本料理」は日本人に
いちばんなじみのない料理?

これ誤解されると困るんですが、
「日本料理」って実は日本人になじみが薄くなってしまってるんじゃないかと。
私の地元は埼玉なんですけど、街には中華屋があふれてますし、
イタリアンとかフレンチとかもたまに行くことはある。
でも「日本料理」ってなると、もちろんお寿司とかお蕎麦とか天ぷらとか
いわゆる「和食」はあるけど、藤井さんがやってらっしゃる
懐石みたいな「日本料理」って、もしかしたら
日本人がいちばん食べる機会がない料理なんじゃないかなって。
日本の伝統的な食べ物なのに…

そうですね。そういう風に印象が薄れていってる部分はあるかもしれません。
いろんな食文化が入って来て、選択肢が増えている。
料理の技法や調理器具も新しいものが入って来てますし。
でも、そういう中でこそ私に何ができるかなと。
やっぱり奇をてらうようなことはしたくない、っていうのはありましてね。
どんな料理もその国の伝統をベースにしているわけで、それぞれ素晴らしい部分がある。
で、伝わってきたそのままを続けているだけではダメだと思うんですが、
やっぱり変えてはいけない部分っていうのが絶対あると思うんですね。

例えば、お節料理に昆布巻きっていうのがありますよね。
あれ、圧力鍋でやったらものの10~15分でできるんです。
ただ、うちは、まず干した昆布を戻してニシンを戻して、
タコ糸で巻いたやつを2日ぐらいかけて柔らかくしながら、
味もゆっくり入れていくという風にやるんですね。
無駄じゃない?って話にもなるんですが、やっぱり無駄じゃないんです。
そうやって作ると、圧力鍋でやった時との食感もぜんぜん違いますし。
やっぱり圧力をかけてやると食材の細胞の繊維を壊して
無理やり柔らかくする、みたいなところがあるんですね。
ゆっくりやっていくのは、やさしくゆっくり力が入っていくっていうイメージ。
童話の「太陽と北風」じゃないですけれども、
無理に風を吹きつけて、ではなく、太陽で照らして自然に上着を脱ぎたくなる、
みたいなところに持っていくというか。

日本酒でも生酛造り(きもとづくり・アルコールを造る酵母を育てる
「酛」(酒母)を昔ながらの手作業で造り上げる製法)っていうのは
醪(もろみ・米、米麹、酛、水を発酵させたもの)を練って造るわけですね。
でも、そんなに練らなくても発酵していくことが近年わかってきたんですけど、
やっぱりそれでしか出せない味わいがあるんです。
そういうところを守っていく一人でありたいなと思っています。

なるほど…深いですね…

-4. 無駄なものこそ美しい!

今おっしゃっていた「手間暇をかける」っていうのは
合理主義の人からしたら、無駄だ、効率的じゃない、と思われるかもしれないですけど、
私からすると、美しいな、かっこいいなって。
私は「人生、無駄こそが美しい」と思ってるので。
バイクっていう、ある意味いちばん無駄なものを売ってる。
要らないんですよ。あんなもの(笑)
天気が悪い日とか、なんでこんなもの乗ってんだろ?とか、
交差点でクルマと並んだりすると、こいつ何考えてんだ?みたいに見られたり(笑)

なるほどなるほど(笑)

私はカメラが趣味なんですけど、
カメラでいうと、ライカっていうドイツのカメラが好きなんですが、
ライカのカメラって、製品としての最後のテストの合格の基準って
数値で示せないんですね。
機械なんだから何かしら数値化できるはずで、
それに達していれば合格だよってなるはずなんですけど、
ライカだけは一つひとつ職人が手に取って、
これはダメ、これはOKってやってるらしいんです。
すげー効率悪いな!無駄だな!美しい!って(笑)

なるほど(笑)

で、あのR18っていうオートバイは、
元々人生では無駄かもしれないオートバイの中でも
最高に無駄の塊なんです(笑)
今の時代に1800ccなんて時代に逆行してますし、
空冷エンジンを採用してるんですが、今は水冷の方が
パワーも出るし排ガスも抑えられるから主流なんですよね。
そこをあえて、いろいろな最新の技術を入れて空冷にして、
最高に無駄なものを作ってる(笑)
パッと見ればクラシカルなスタイルなんですけど、中身は最新で、
BMWが「今の技術でできることをぜんぶやろう!」って言って
やっているものなので。

おもしろいですね(笑)

今日持ってきたバイクはR18 Bっていうやつで、
パワーとBMW Motorradのツアラーの歴史を融合させた
ちょっとエモい感じのモデルなんですね。
無駄に1,801ccもあるんですけど(笑)
けっこう人気のモデルです。

なるほど、クラシカルに見せて中身は最新、
で、無駄にパワーがあると(笑)
いいですね!

BACK TO TOP